エルダーフラワー ELDER FLOWER
[学名]
Sambucus nigra Linne
[科名]
レンプクソウ科ニワトコ属
[和名]
セイヨウニワトコ
[使用部位]
花部
葉部
果実
[成分]
《花》
フラボノイド(ルチン、クエルシトリン、アストラガリン、イソクエルシトリン、ケンフェロールなど)
フェノール酸(クロロゲン酸、p-クマル酸、カフェ酸)
脂肪酸(パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸など)
ミネラル類(カルシウム、ナトリウムなど)
ビタミンC
コリン
レクチン
粘液質
タンニン
ペクチン
精油
《葉》
糖類
ビタミン類
タンニン
樹脂
青酸配糖体(サンブニグリン)
《果実》
有機酸*果実酸(クエン酸、リンゴ酸)
ビタミンA・C
糖類
フラボノイド(ルチン、ケルセチン、イソケルセチンなど)
クロロゲン酸
ミネラル類(特にカリウム)
アントシアニン(サンブシン、サンブシアニン)
青酸配糖体(サンブニグリン)
[作用]
《花》
発汗、利尿、保湿、抗カタル、抗炎症
《果実》
抗ウィルス、抗酸化、収れん、緩下、抗炎症
[注意]
未成熟の果実、及び果実以外の部分(葉や幹など)には青酸配糖体(例:サンブニグリン)が含まれており、悪心や嘔吐、下痢を引き起こします。大量に摂取すると、深刻な病気を引き起こす可能性があります。
*加熱など適切な調理方法で毒性物質は取り除かれるとされます。
[概要]
セイヨウニワトコの原産地はヨーロッパ〜北アフリカ、⻄・中央アジアに自生、スイカズラ科の小高木樹で、高さは約9mほどになります。
なお、ニワトコ属は北半球の温帯〜熱帯に広く分布し自生します。
花期は初夏、クリーム色に咲く花部は開花直前に採集し、陰⼲して使用します。
果実は秋にかけ熟したものを使用します。
様々な薬効から古くから万能薬として重宝され、内用・外用に広く民間療法に活用されてきた歴史があります。
ヨーロッパでは病気や悪霊を寄せ付けない「厄除け・魔除けの木」としての伝承もあり、現在も庭先に植える家庭もあるようです。
ゲルマン神話・北欧神話でもセイヨウニワトコはその名を残します。
また、ヨーロッパの伝統的な自然飲料で、シャンペンやマスカットのようなフルーティさを楽しめるエルダーフラワーの花を用いたコーディアルは耳にしたこともあるかと思います。
元はハーブをアルコールに漬け成分を抽出した飲み物を健康に役立てていたようですが、脈絡した歴史を経てハーブや果物をシロップと一緒に漬け込んだ形がコーディアル、ノンアルコール自然飲料として親しまれています。
果実はジャムとして家庭で手作りされたりと親しまれています。
私たちに馴染みのあるニワトコ「Sambucus racemosa L. subsp. sieboldiana(Miq)H.Hara.」は本州、四国、九州、朝鮮半島南部、中国の暖帯、温帯するの山野によくみられる小喬木で、生薬名でもあるセッコツボクとも呼ばれます。
なお、セッコツボクは茎を薬用部位としたもので、ほか生薬として葉をセッコツボクヨウ、花をセッコツボクカとそれぞれ呼び薬用されます。
ニワトコの外観はセイヨウニワトコと大差なく、葉も花もよく似てますが、ニワトコの果実は赤いのに対し、セイヨウニワトコに実る果実は黒くなることから、学名「nigra(黒い)」の名の由来ともなっています。
属名「Sambucus」はギリシア語「sambuce」古代楽器名に因み、茎がたくさん林立する様子が楽器に似ていることから、また茎の髄を中空に抜きやすく楽器として遊ばれたなど由来に諸説あります。
ちなみに、中空に抜きやすいその性質から、火をおこすための火吹きとして用いられたことから、アングロ・サクソン語で「炎」を意味する「oeld(エルド)」と呼ばれ、それがエルダーの語源になったといわれています。
エルダーフラワーは淡黄色の色素成分であるフラボノイドを豊富に含むフラボノイドハーブの代表で、発汗、利尿作用に優れます。
またそのほかの作用として抗カタルにも優れます。
エルダーフラワーに含まれるクエルセチンなどのフラボノイドは、毛細血管透過性の亢進を抑制したり、ヒスタミンの遊離を抑制したりして症状を和らげるので、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのカタル症状、花粉症の緩和に用い、単独で浸剤だけでなくシロップ剤やチンキ剤などの剤型で活用することもありますが、症状の緩和には継続的に飲用すると効果的です。
【補足:フラボノイドとビタミンP?‥ビタミンPはフラボノイド化合物、バイオフラボノイドと呼ばれることがあり、フラボノイド(色素)の総称です。ルチンやヘスペリジン、ケルセチンなどのフラボノイドをあわせてビタミンPと呼びます】
発熱、発汗をスムーズに促す働きと、鼻や喉の粘膜を強くして刺激から保護する粘液質の働きから風邪・インフルエンザの予防・初期症状に汎用されます。
ヨーロッパでは、花粉症をはじめとした呼吸器系の疾患に、抗アレルギー作用のあるネトルなどと、風邪とインフルエンザの予防にシングル、または頭痛などの不快な症状にペパーミントや発汗剤の相乗効果としてリンデンなどと一緒に使用されます。
カタル症状には同じく抗カタル作用を持つアイブライトやゴールデンシールなど、風邪やインフルエンザの初期症状には、免疫賦活作用、去痰作用、抗ウィルス、鎮咳作用、発汗促進作用をもつタイム、エレキャンペイン、エキナセアなどのハーブと一緒に活躍します。
咳がつらい、喉が痛む場合は、マレインをブレンドしてみましょう。
マレインには粘液質をはじめ、サポニンやアピゲニンなどの成分が複合的に働くので、鎮咳、去痰作用を発揮して症状を緩和します。
冷えを感じる場合は、血行を促し身体を温め、痰や粘液の排出を促すジンジャーをブレンド、炎症や発熱時のビタミンCの消耗には補給としてローズヒップをブレンドすると良いでしょう。
なお、果実であるエルダーベリーにもビタミンCを含むため風邪、インフルエンザの初期症状に一緒に摂取するのもオススメです。
リンデンやジャーマンカモミールなど、フラボノイドを中心としたハーブはいずれも発汗を促進しますが、睡眠前には神経を鎮める働きもあるこれらのハーブをあわせて、十分な睡眠を摂って自然治癒力を向上させるのに役立てるといいでしょう。
安全なハーブのため幼児~高齢者まで気軽に使用できます。
◼️外用
炎症を抑える作用から、浸出液や軟膏としてニキビや皮膚炎、切り傷、打撲傷や打ち身、日焼けた肌などに用います。
◼️エルダーベリー
果実であるエルダーベリーはビタミンCを豊富に含みますが、食用としてだけでなく、民間薬として昔から風邪予防や治療に利用されてきた歴史があります。
現在ではインフルエンザおよびそのほかの上気道感染症の症状を軽減することが示唆され、その予防・治療に利用されます。
そのほか抗酸化作用を持つポリフェノール(アントシアニン色素など)、ビタミンAなどを豊富に、またクエン酸、リンゴ酸などの植物酸(果実酸)を含み、老化、生活習慣病などの予防、目の健康維持に、美肌などの美容効果に期待できます。
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