エキナセア ECHINACEA
[学名]
Echinacea angustifolia
Echinacea purpurea
Echinacea pallida
[科名]
キク科エキナセア属
[和名・英名]
ムラサキバレンギク、パープルコーンフラワー
[使用部位]
地上部
根部
[成分]
カフェ酸誘導体(エキナコシド、シナリン、シコリック酸)
多糖類(ヘテログリカン類など)
アルキルアミド(イソブチルアミド)
フラボノイド(クエルセチン、ケンフェロールなど)
ピロリジジンアルカロイド(微量)
精油ほか
[作用]
免疫賦活・調節、浄化及びリンパ系浄化と活性、抗ウィルス、抗菌、消炎、創傷治癒
[注意]
・キク科アレルギーの方は使用しないでください
・ドイツのコミッションE(略:GCE)モノグラフでは、エキナセア製剤の内服・外用を最長8週間以内で推奨しています*1
*1)エキナセア製剤は、比較的軽度であり一過性の症状の改善に適します。連用での危険性によるものではないですが、8週間用いても症状が続く場合、より積極的な治療が必要であると考えられます。
・免疫抑制剤を服用、また結核、白血病、膠原病、多発性硬化症、エイズ、HIV感染おそびその他の自己免疫疾患のような進行性疾患には使用禁忌
・比較的軽度であるものの、薬草としては効果が強く、体質的に合わない、またごく稀にアレルギー反応を起こす場合もあるため、使用目的に合わせ使用量の加減が必要です。長期的に使用を検討される際は量を少なめにしてください。
[概要]
北米大陸原産、多年草。
乾性土壌に生え、特に草原に多く見られます。
学名「Echinacea」はギリシャ語で「ハリネズミ」や「ウニ」を意味する「echinos」に由来し、花中央の盛り上がった棘状の形に因みます。
英名「Purple Coneflower」は紫色の円錐形(コーン形)の花という意味。
和名をムラサキバレンギクといい、日本には1926年頃渡来、最盛期(花期6月~夏)を過ぎた舌状花の垂れ下がった花形が、「馬簾(ばれん)」に似ていることに由来し、赤紫の花の色から名付けられました。
【補足:「馬簾(ばれん)」とは、江戸時代の火消しが使う「火纏(まとい)」の先にある飾り】
先住民の知恵が、今日の科学的検証を経て先進国で使われるようになったという薬草は多く、エキナセアもそのうちの一つ。
北米先住民が伝統的に大切にしたハーブの一つであり、【インディアンの秘薬】ともいわれ、風邪、伝染病、毒ヘビの咬傷・解毒の治療などに内服、パウダー状にしたものを塗擦したりと用いられてきた歴史があります。
現在もアメリカのハーブ市場では人気の高いハーブのひとつであり、エキナセア属植物といくつかのハーブにより調製された製剤は、スーパーマーケット、自然食品店など市場で売られています。
エキナセアには9つの近縁種がありますが、医療用途に用いられるのは「E. angustifolia」、「E.purpurea」、「E.pallida」の3種に限られ、うち英国ハーブ薬局方(略:BHP)では「E.angustifolia」の根を収載、GCEモノグラフでは「E.purpurea」の開花期の地上部と「E.pallida」の根を承認ハーブとして収載しています。
とはいえ、現在3種においては各国隔たりなく、地上部、根部を平常使用されるケースが多くありますが、品種や部位により成分が異なるため、2種ハーブをミキシング、または地上部、根部を両方用い、剤型も生の圧搾液、カプセル剤、サプリメント剤、チンキ剤など様々な製剤で用意する場合もあります。
ヨーロッパには19世紀末に紹介され栽培が開始、戦後はドイツを中心にエキナセアの科学的研究が進められ、免疫賦活作用や抗ウィルス作用などの有効性や安全性が確認され、その有効性から、免疫力を高める【天然の抗生物質】であるハーブとして各国で広く知られます。
【補足:初めての調製は、1800年代後半、ドイツ系アメリカ人医師であるH.C.F. Meyerによる「Meyers Blood Purifier」で、当時は腸チフス、梅毒、リウマチ、神経痛などあらゆる治療に用いられる奇跡の治療法として謳われ、アメリカでは一般的な植物療法として知られました。19世紀の米国には、通常医学の医師の他、ホメオパシーの医師やエクレクティック派の医師など、さまざまなタイプの医師が存在しており、エキナセアはエクレクティック派の医師により活発に治療に用いられました。なお、エクレクティック派とは、折衷案主義を指し、自然療法と化学療法を取り入れた療法を行う医師たちから生まれ、現在、ナチュロパシーと呼ばれる自然療法は、エクレクティック派医師らが築き上げたものです】
エキナセアの含有成分についてはエキナコシドやシナリンなどのカフェ酸誘導体やヘテログリカン類などの多糖類、それにイソブチルアミドなどのアルキルアミドや精油、微量のピロリジジンアルカロイドなどが確認されています。
エキナセアの特徴的な作用のひとつは、免疫系に関連した多様な活性があることです。
免疫細胞の増加や免疫細胞の活性化などとともに、抗菌、抗ウィルス、創傷治癒作用に優れます。
エキナセアの多糖類はマクロファージの活動を活発にし、インターフェロンの産出を促進する(免疫力が高まる)ことが報告されており、現在は風邪やインフルエンザなどの上気道感染症、気管支炎、扁桃腺炎、腺熱など急性の感染症~慢性の感染症の緩和や回復に、リンパ腺の腫れ、ヘルペス、カンジダ症、膀胱炎や尿道炎などの泌尿器感染症、治りにくい傷などの治療に単独で、または医薬品の補助療法として用いられます。
膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症にはエキナセア単独でも構いませんが、クミスクチンやホーステール(和名:スギナ)、クランベリーなどの利尿ハーブと併せて飲用するとより良いいでしょう。
ケイ素も含むホーステールは組織を強化し、クミスクチンは腎機能を高めてくれますし、クランベリーは尿や尿道を酸性にして大腸菌の増殖を防いでくれます。
ただしクランベリーは非常に酸味が強く、かなり飲みにくいためサプリメント摂取を推奨いたします。
風邪やインフルエンザなどの感染症は身近なものですので、以下におすすめのブレンドなどの対策をご紹介します。
悪寒やくしゃみ、鼻水などのカタル症状があれば発熱・発汗を促し、血管の強化とともに粘膜を保護するエルダーフラワーなどフラボノイドを中心としたハーブをブレンドしてみてください。
睡眠は治癒に欠かせませんので、就寝前に同じくフラボノイドの豊富なカモミールなど神経を鎮めてくれる効果が高いハーブも一緒にブレンドし飲むといいでしょう。
また、いずれにしても発熱時などビタミンCの消耗が激しくなるため、補給用としてローズヒップやブラックカラントもブレンドしておきましょう。
身体が冷えている場合には、血行を促進し体を温め、痰や粘液の排出を促すジンジャーをブレンドしてください。
咽頭の痛みが気になる場合は、マロウやマーシュマロウ、マレインなど、粘液を豊富に含むハーブを用います。
これらのハーブは粘膜を保護し、のどの腫れや痛みを緩和し、気道の緊張を和らげてくれます。
マレインには粘液質をはじめ、サポニンやアピゲニンなどの成分が複合的に働くので、鎮咳、去痰作用を発揮して症状を緩和してくれるでしょう。
◼️外用
エキナセアの活用方法として、ストレスや疲れによる体の抵抗力の低下時、免疫が弱っている時に起こる症状一般や、感染を予防するためにも浸剤・チンキ剤を作って内服だけでなく、うがい薬としても効果的に利用できます。
その場合は、うがい薬に抗菌力がとても高いセージやタイムを併用してもいいでしょう。
感染症予防の観点で、恒常的な対策案としては、チンキ剤を作っておくとうがい薬として活用しやすくなります。
エキナセアは、ほかアレルギー症状、湿疹やニキビ、潰瘍などの皮膚症状、擦り傷や治りにくい傷にも活躍しますが、消炎、抗菌、創傷治癒作用の働きから、患部そのものへ塗布し用いることができます。
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