バレリアン VALERIAN
[学名]
Valeriana officinalis L
[科名]
スイカズラ科(オミナエシ科)カノコソウ属
[和名]
セイヨウカノコソウ
[使用部位]
根部
[成分]
精油(β-カリオフィレン、カンフェン、α-ピネン、バレレナール、バレラノン、バレレン酸、酢酸ボルニルなど)
バレポトリエイト
ピリジン系アルカロイド(アクチニジンなど)
[作用]
鎮静、鎮痙、抗不安、鎮痛、降圧、駆風、去痰
[注意・禁忌]
・妊娠授乳中、3歳以下の幼児へ使用しないでください。小児(12歳以下)の使用は医師へ相談しましょう
・入眠剤や精神安定剤など鎮静剤との併用に注意ください
・運転、機械操作、判断力・集中力が必要なシチュエーションを控えている場合は使用に注意ください
・体質に合わない方、多量または連用で動悸、めまい、頭痛、胃部への不快感がごく稀に発現する可能性があります。
・1ヶ月を超える連用は避けましょう
[概要]
ヨーロッパ原産の白〜淡い白桃色の花を咲かす多年草。
秋から冬にかけて栽培し乾燥した根を使用します。
日本に自生するカノコソウ(別名:ハルオミナエシ、エゾカノコソウ)『Valeriana fauriei Briquet.』の根は「吉草根(キッソウコン)」[※セイヨウカノコソウの根を「ワレリアナ根」と呼び分ける場合があります]と呼び、鎮静薬の生薬「カノコソウ」として日本薬局方にも収載されます。
【補足:基原植物(生薬の原材料となる植物を指す用語)として、セイヨウカノコソウ、カノコソウの変種も追加収載されておりましたが、現在はカノコソウのみ基原植物として収載されています。なお園芸品種でみるアメリカンバレリアン(別名:ベニカノコソウ)『Valeriana ruber sym Centranthus ruber.』や同じく日本に自生するツルカノコソウ『Valeriana flaccidissima.』は薬効を持ちません】
和名「カノコソウ」の由来については、真上からのぞいたときの、密に咲く花と蕾のその模様から、鹿の子絞りに見立てて名付けられました。
バレリアンの歴史は古く、古代ギリシア・ヒポクラテスの時代から【眠りのハーブ】として不眠症のほか頭痛や胃痙攣などに用いられてきました。
バレリアンルートとその抽出物においてはアメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリア、ロシア、イギリスなどの薬局方に収載され、鎮静、催眠の効能が承認されており、現在では浸剤のほかサプリメントやチンキ剤、エキス剤など各国で神経性の睡眠障害に繁用されています。
なお、バレリアンの根を乾燥させる工程の際、非常に強い臭気を伴いますが、これはイソ吉草酸によるもので、猫にとってはマタタビ同様に陶酔を起こす臭いです。
ご自宅で栽培、乾燥させる際は40℃以下の環境下で自然乾燥させましょう。
バレリアンは中枢神経を抑制し筋肉の緊張を和らげるので、軽度〜中等度の不眠症(神経性の睡眠障害)のほか、イライラなどの神経過敏ほか、不安が強いとき、パニックに陥りそうなときに用います。
それらのシチュエーションに、ラベンダー、リンデンやホップ、オレンジフラワーやパッションフラワーと一緒にブレンドするとより効果的です。
特に入眠・睡眠の質改善を目的とした場合、同じく不眠症に使われ鎮静効果の高いホップをブレンドのひとつに定番として入れておくといいでしょう。
ほかストレス性、緊張性の頭痛・胃痛、高血圧、過敏性腸症候群(IBS)、神経性の咳、神経疲労、生理痛の緩和に使います。
頭痛にはスカルキャップなど、高血圧にリンデンやホーソンリーフなど、過敏性腸症候群(IBS)にはカモミールやレモンバームなどと、動悸にマザーワート、神経疲労にオート、生理痛には入手可能であればパルサティラなどとブレンドしてみましょう。
バレリアンを活用するシーンには、アロマテラピーを併用してオイルマッサージやアロマバスなどでケアするとより効果的です。
バレリアンは就寝前の摂取だけでなく、日中の不安症状や緊張を和らげるのに、また後述の症状に利用することももちろんできますが、判断力や集中力を必要とするシチュエーションを控えている場合は摂取のタイミングや摂取量に注意いただくと良いでしょう。
なお、バレリアンの筋肉の緊張を解くメカニズムは完全には解明されていませんが、脳の興奮を抑える神経伝達物質であるガンマアミノ酪酸(GABA)の代謝に関与するという報告があり、またバレリアンは睡眠薬に比べて眠りの質の点でも優れているとされます。
強い睡眠薬と違い、レム睡眠・覚醒後に持ち越される有害性がないので、自然な眠りから覚醒に導いてくれるため良質な睡眠がもたらされます。
【補足:GABAとはガンマアミノ酪酸というアミノ酸の一種。交感神経の抑制から副交感神経の優位による一時的・心理的なストレス軽減、血圧低下効果など】
ほかバレリアンについて、3種のイリドイド系モノテルペンの総称であるバレポトリエイトが毒性を生じるとの指摘もあるようですが、バレポトリエイトは熱に不安定なことから化学的にも分解されやすく、さらに腸管からの吸収も悪いため問題はないとされています。
バレリアンは浸剤での香りは気にならないものの、保管時に漂う臭いに抵抗感を覚える方も多いと思われます。
その場合、サプリメントやエキスカプセル剤や錠剤を活用してみるのもいいでしょう。
(2024.2.13 Organic Herbal BulkShop & TeaRoom Bownim)