ユーカリ EUCALYPTUS
[学名]
Eucalyptus globulus Labill
Eucalyptus radiata Siebold
[科名]
フトモモ科ユーカリ属
[使用部位]
葉部
[成分]
精油(α-ピネン、1,8-シネオール、カンフェンなど)
フラボノイド(ルチン、クエルセチン、クエルシトリンなど)
タンニンなど
[作用]
去痰、鎮痛、抗菌、抗真菌、抗ウィルス、浄化、穏やかな鎮痙、抗ダニ(※忌避作用)
[注意]
浸剤での利用時、消化器に刺激があるため、過度の使用、長期連用は控えましょう、むかつき、吐き気を催す可能性があります
《ユーカリ精油について》
・胃腸および胆道の炎症性疾患をもつ方、重症の肝臓疾患をもつ方、高血圧、てんかんの持病の方は使用はしないでください
・過剰投与で激しい咳、喘息を誘発する恐れがあります
・肌が過敏な方の使用は控えましょう
・子どもへの使用はできません、特に2歳以下は使用してはいけません、乳幼児の顔面、鼻まわりに塗布しないでください
[概要]
単にユーカリと言っても、800種以上を超える非常に多くの品種があり、最狭義にはユーカリ・グロブルス『Eucalyptus globulus Labill.』を指します。
狭義にはユーカリ(エウカリプトゥス)属「Eucalyptus」の総称とし、広義にはユーカリ属ほか、コリンビア属、アンゴフォラ属含め、最広義においてはさらに「Eucalyptopsis(エウカリプトプシス属)」、アルロシンカルピア属、アリルラストゥルム属、ストックウェルリア属も含まれるようです。
属名「Eucalyptus」は、ギリシャ語の「よく」を意味する「eu」と、「覆う」を意味する「kalýpto」を語源とし、萼と花冠が蓋状に蕾を覆っている、また乾燥地域や痩せた土壌でもよく大地を覆うその生命力の強さに由来するようです。
英名では「eucalyptus」「eucalypt」「gum tree」などと呼ばれますが、これはユーカリ類の総称であり、それぞれの品種の英名には、各種特徴によって因んだ名称がついているようなので学名を確認しましょう。
ユーカリ類のほとんどはオーストラリア原産であり、ユーカリ・グロブルス『Eucalyptus globulus Labill.』はタスマニアに生育する高木で、古くからオーストラリア先住民アボリジニによって、木材を薪や生活用品として、ほか楽器にカヌーなどで利用のほか、葉、樹脂や樹液などを傷や真菌感染症、発熱やかぜなどの呼吸器感染症の治療薬として伝統的に用いられてきた歴史があります。
オーストラリアといえば、遠目で青々と見える山(ブルーマウンテン)がありますが、この青みはユーカリの葉から空気中に放出されたテルペン類精油によるものだそうです。
また、このテルペン類精油は引火性物質でその放出量は高温で多くなるため、オーストラリアは1年通しとても乾燥していることもあり山火事が発生しますが、特に夏期にテルペン濃度はかなり上昇します。
ユーカリの生育する林には、ヤマモガシ科バンクシアという植物が共生しますが、バンクシアの種子は、山火事に会わないと発芽しないことで有名です。
多くの固有種を育むオーストラリアの独自生態系ですが、樹齢100年以上の天然林の伐採が進んだこと、また地球温暖化による異常乾燥などの気候変動の影響により、元々自然現象の一つであった山火事が頻繁に発生、大規模・長期化する傾向にあること、様々な要因で生態系は全体的に劣化しているとのことです。
『1788年以降、オーストラリアでは分かっているだけでも100種の野生生物が絶滅しました。絶滅危惧種の数も年々増加し、オーストラリア国内のレッドリストには、2011年から2016年の間で175種、2016年から2021年で更に202種類が追加され、2022年6月時点で計562種の動物と1,411種の植物が登録されています。特に哺乳類の状況は深刻で、過去200年で全体の10%が絶滅。残っている哺乳類の20%も絶滅の危機に瀕している状態です。これは他の大陸と比較して、最も早く減少・絶滅していることを意味しています。多くの人々に愛され、オーストラリアを象徴するコアラもまた、2050年までに絶滅する地域が出てくると言われるほど、危機的な状況に置かれています』「出典:WWFジャパン(https://www.wwf.or.jp/)」
1770年以降西洋人のオーストラリア入植をきっかけに、ユーカリ木の発見、またその薬効が評価されることとなり、後にユーカリ精油品が商用として生産、そしてユーカリ精油に関する論文が、19世紀末期には医学雑誌「The Lancet」(※世界で最も評価が高い医学雑誌の一つ)に掲載されています。
ユーカリの葉は精油を最大3.5%、タンニンを最大11%含有し、抗菌、去痰、穏やかな鎮痙作用があります。
ユーカリにはとても高い抗菌力があります。
またユーカリ木を伐採すると感染病が流行するなどの謂れがあります。【補足:ユーカリ木を伐採するとマラリアなどの感染症が流行した、または植樹によって感染症撲滅に寄与したといったエピソードがあります。 これらのエピソードは植物の生命力の強さにも直結する水を吸い上げる力が関連しているとされ、特にユーカリ類の多くはその力がとても強く、土壌の水はけを良くする性質から、蚊媒介感染症を結果的に防げたのだと思われます】
ドイツ、フランスなどのヨーロッパでは、上気道カタル、喉の炎症にユーカリの葉を浸剤で内服するほか、中耳炎などにチンキ剤を外用するようです。
また国によっては風邪などに、ユーカリのチンキ剤と、エキナセアなどの免疫調節系ハーブのチンキ剤、タイムなどの抗菌系ハーブのチンキ剤をそれぞれ調整しながら処方されることもあるようです。
◼️精油
800種以上と多くの品種があるなか、日本国で一般的に主に流通しているのはユーカリ・グロブルス、ユーカリ・ラジアタ『Eucalyptus radiata』の2種。
ほかレモンユーカリ『Corymbia citriodora』(※Eucalyptus citriodoraとして表記されている場合もあります)、ペパーミントユーカリなどの流通もあります。
原産国であるオーストラリア医療では、ユーカリ・グロブルス以外に様々なユーカリが用いられることもあるようで、中でもメディカルグレードとしてユーカリ・ポリブラクテア(英名:Blue Mallee /ブルーマリー)『Eucalyptus polybractea』が重用されるようです。
以降ここでのユーカリ精油はユーカリ・グロブルスとして記述します。
ユーカリ精油は抗菌、抗ダニ作用(※忌避作用)、去痰、鎮咳、鼻詰まりの除去、抗炎症、鎮痛などの作用があります。
主成分である揮発油、その中でも1.8-シネオールによる働きが大きく、一般的には精油で使用します。
ユーカリ精油はそれらの作用から、気管支炎や花粉症などのカタル症状、風邪インフルエンザの咳や頭痛などに蒸気吸入で用いることができます。
蒸気吸入は精油を用いるほか、刺激の気になる方はユーカリの葉を直接細断し、細断したものを熱湯にかけて、立ち上がる蒸気をひと呼吸置いた後に吸入させても良いでしょう。
精油での芳香浴の際は、咳やカタル症状の緩和に合わせて室内の空気の浄化に、また乾燥も防ぐことができるのでお得に活用できます。
タバコ、ゴミなどの気になる室内の臭い消しや、室内空気の浄化など環境を整える目的として、また喘息やアトピー性皮膚炎のアレルゲンとなるダニには、ℓ-メントールを含み同じく抗ダニ、抗菌作用と消臭力の強いペパーミントと合わせてみても良いでしょう。
花粉症にも有効な精油の活用方法として、外出時など、また不快な鼻の詰まりにペパーミント精油やユーカリ精油をマスクに1滴を垂らしておくと鼻通りがよく、気分もスッキリします。※皮膚に接触しないよう表側に垂らすことをおすすめします
1.8-シネオールほかテルピネン-4-オールを含み、アレルギー反応が抑えられることが期待できるティートリーと併せて、芳香浴や蒸気吸入で用いてみるのも良いでしょう。
また、精油は経皮吸収されるので、ユーカリ精油をチンキ、軟膏、トリートメントオイルに剤型したものをリウマチなどに外用します。
【補足:[テルピネン-4-オール」という成分には、麻酔と似た作用があり、この成分によって痛みとかゆみを和らげてくれるため、炎症を抑えると同時に鎮痛効果も発揮します。 ティートリーは強力な殺菌力と抗炎症作用を持ちながら肌への刺激も少ないため、切り傷や虫刺され、日焼けの鎮静など肌トラブルのケアにおすすめです。 また、優れた抗感染作用や免疫力向上の働きもあります。 風邪やインフルエンザなどの感染症予防や、花粉症などのアレルギー症状の緩和に役立ち、呼吸器系の痛みや炎症をやわらげる効果もあるため、鼻づまり、鼻水、副鼻腔炎、喉の痛みにも効果的だといわれています】
気管支炎など咳が激しく眠れないといったときには、ローマンカモミール精油やラベンダー精油などと併用しトリートメントオイルを作って胸部に塗擦する方法もあります。
ユーカリの抗菌、去痰作用、またローマンカモミールやラベンダーの香りが相まって心地よい眠りに誘ってくれるでしょう。
同じく抗菌作用の強いモミ精油、そのほかフランキンセンス精油の香りは呼吸器系の機能調節に優れていますので、芳香浴やオイルに併せてももちろん良いでしょうし、咳や呼吸器系のトラブルに古くから用いられる甘い香りをもつベンゾイン精油や、ウッド系の香りと相性の良いオレンジなどの柑橘系精油と併用し、芳香浴ほか、軟膏を作って同じく胸部に塗布するのも良いでしょう。
蒸気吸入で使用すれば、蒸気が気道粘膜に潤いをもたらし、咳を鎮めるとともにベンゾインの甘い香りが、軟膏剤で塗擦すれば、子どもにはタッチング効果も相まって、不安や緊張をよりほころばしてくれます。
軟膏剤においては就寝時にも芳香成分が持続するので、症状を和らげながら、質の良い眠りを得られるでしょう。
ただし、ユーカリ精油は過剰投与で激しい咳や喘息をかえって誘発する可能性もあるので、注意してください。
なお、精油を治療として用いる場合においては、1.8-シネオールを70%以上含有するものを使用するといいかもしれません。
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