セントジョンズワート ST. JOHN’S WORT
[学名]
Hypericum perforatum L
[科名]
オトギリソウ科オトギリソウ属
[和名・別名・中薬名]
セイヨウオトギリソウ、コモンセントジョンズワート、カンヨウレンギョウ(貫葉連翹)
[使用部位]
開花時の地上部
[成分]
ジアンスロン類(ヒペリシン、ソイドヒペリシンなど)
フラボノイド配糖体(ヒペロシド、ルチンなど)
クエルセチン
フロログルシノール誘導体ヒペルフォリン
ハイパーフォリン
タンニン
精油など
[作用]
抗うつ、神経系回復強壮、鎮静、抗ウィルス、収れん、鎮痛、抗炎症
[注意・禁忌]
・ヒペリシンに光感作作用があります。浸出油、チンキ剤を使用中は日光への過度の暴露を避けてください。また光線治療中の方は使用しないでください。※飲用については問題ないとしている記事も散見しますが、この植物を食して陽に当った動物の皮膚障害が報告されているため、内服においても日中の外活動が多い場合は避けた方が無難でしょう
・妊娠授乳中の方は多量使用しないでください
・ごく稀に便秘などの消化器系の症状、胃腸障害を起こす可能性がありますので注意ください
・ネットで海外製のサプリメント錠剤、カプセル剤、チンキ剤として販売されていますが、配合成分にカバが扱われることもあるので注意が必要です。※2002年3月25日_米国食品医薬品局(FDA)は「カバを含有する製品の摂取により肝障害を引き起こす可能性がある」として、消費者への注意喚起を行っいます。ドイツ、スイス、イギリスでは重度の肝毒性(肝障害)が報告されており、肝移植が行われた例、また死亡も確認されています。また、ドイツ、スイス、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア等でも注意喚起されており、シンガポールでは使用禁止、カナダ、イギリス等では回収措置がとられています。【補足:カバはフィジーやバヌアツなど南太平洋の島々に生育し、その根や根茎から調製した飲料は社交や儀式に不可欠な飲料として数百年にわたって現地の人々に飲用されてきたハーブですが、使用部位の根は「医薬品の範囲に関する基準の改正について」(平成13年3月27日医薬発第243号厚生労働省医薬局長通知)の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」により、日本では「食品」には使用できません】
・セントジョーンズワートは肝臓での薬物代謝酵素に影響を及ぼし、他医薬品の血中濃度を変化させてしまうため、薬の治療活性が減弱、または副作用が強く出る可能性があります。薬物相互作用から厚労省は、28種の医薬品との併用を避けるよう注意喚起の通達をしていますが、薬を服用中の方は医師へ事前に相談しましょう。【補足:有害な相互作用を起こしうる薬剤例として、シクロスポリン(免疫抑制剤),ジゴキシン(強心薬)、鉄サプリメント、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、経口避妊薬、プロテアーゼ阻害薬、インジナビル、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗うつ薬、ワルファリン(血液凝固防止薬)、鎮痛薬、テオフィリン(気管支拡張薬)、抗てんかん薬、 抗不整脈薬など】
[概要]
北西ヨーロッパ原産。ヨーロッパ、西アジア、北アフリカなど日当たりの良い山地や丘陵地に分布する多年草。
オトギリソウ属にはたくさんの種があり、「旧The Plant List 2010 ~ 2013(The Plant Listは、2010年にキュー王立植物園、ミズーリ植物園によって作成、発売されたグローバルガイドラインとなる植物名リスト)」では、458種が認められており、観賞用のものは世界中で栽培されています。※現World Flora Online 2013 ~(キュー王立植物園、ミズーリ植物園に、ニューヨーク植物園、エジンバラ王立植物園が加わった)
日本では、観賞用園芸品種を中心に、属名からヒペリクム、ヒペリカム、ハイペリカムと、まとめて呼ばれることがあります。
日本の固有種としては、ダイセンオトギリ、イワテオトギリ、ハチジョウクロオトギリ、ハコネオトギリ、セトウミオトギリ、センカクオトギリなど数多くの種があり、北海道から沖縄まで各地方に広く生育します。
なお、日本で広くみられるオトギリソウについては、東アジア原産種であるようです。
「セントジョンズワート」は、広義にはオトギリソウ属植物の総称で用いられ、狭義においては、セイヨウオトギリソウ『Hypericum perforatum L.』を指します。
英名では広義の意味と区別するために、「コモンセントジョンズワート」と呼び分けることがあります。
属名の「Hypericum」は古代ギリシャ名「hyperikon」を語源とし、ギリシャ語で「上の」を意味する「hupér」と「像」を意味する「eikon」の合成語で、「聖画像の上」を意味し、「聖画像の上に飾り魔よけとした」、「悪魔を制す」といった意味に由来しますが、諸説あるようです。
種名の「perforatum」 はラテン語で「孔のある」や「貫通した」を意味し、花や葉にある明点に由来するようです。【補足:オトギリソウ属植物では、暗赤色色素成分ヒペリシンや精油の分泌組織が肉眼で確認することできます。その分泌組織は、見た目から点状と線状のものに分けられます。点状、線状のものそれぞれに、無色透明、黒色、赤色のものがあります。これらを一般には、明点(=油点)、黒点、赤点、明線 (=油線)、黒線、赤線と呼び、点状のものをまとめて腺点、点状と線状のものをまとめて黒腺、明腺、全てをまとめて腺体、油腺と称します。これらの分泌組織は細胞に取り囲まれた細胞の間隙で、その多くは分泌物や排泄物が蓄積されている状態となります。分泌組織のうち、一般に精油を蓄えるものを油室、管状の空間に精油を蓄えるものを油管、樹脂を蓄えるものを樹脂道、乳液を蓄えるものを乳菅と呼びます。肉眼で確認できる黒点は、オトギリソウ属植物の分泌物であり有効成分である暗赤色色素ヒペリシンによるものです。明点には精油が蓄積されていると考えられるため、太陽光に翳し見ると、空洞があるように透けて見えます。ご自身で浸出油やチンキ剤を作成する上では、ヒペリシンも重要なため、黒点の多いものを選ぶと良いでしょう】
英名の「セントジョンズワート」は「聖ヨハネの薬草」を意味し、聖ヨハネの誕生日である夏至の時期に花を咲かせるためといった説や、葉にある黒い斑点はヘロデ王によって聖ヨハネが斬首された際に流れ出た血の象徴、または暗赤色の搾汁をヨハネの血に例えられて、といった由来についての諸説がいくつかあるようです。
実際に、ヒペリシンを含む赤色色素を溶出させたセントジョンズワートチンキ剤(アルコール抽出液)は血液にも似た暗黒色を呈します。
なお、ヨーロッパにおいて、セントジョンズワートの花言葉は「迷信」、「不信」、「敵意」などが知られています。
和名を「セイヨウオトギリソウ」と呼びます。
和名にあるオトギリソウ、漢字では「弟切草」と表記され、平安時代の鷹匠の兄弟にまつわる伝説に由来します。
【伝説:ある鷹匠が、深手の傷でもたちまち癒す花の存在を、周りの者には秘密に、鷹が傷ついたときの治療薬として、この花を使っていました。鷹匠には弟がいましたが、密かに治療薬の存在を洩らしてしまった弟に激昂した鷹匠は、一刀のもと切り殺してしまいます。このとき飛び散った血痕が、葉や花びらに付着し、黒い斑点になったといいます】
日本において、セントジョンズワートの花言葉は「秘密」、「恨み」などが知られますが、この伝説が由来しているようです。
太陽の下で、光り輝くように黄色い花を咲かすセントジョンズワートは、メディカルハーブとしては、開花時に採集し利用します。
精神の苦しみを和らげ、暗く落ち込んだ心を明るくさせることから「サンシャインサプリメント」と呼ばれ、世界中で広く愛されています。
セントジョンズワートは、毎年6月24日「St. John's Day」(聖ヨハネの日)に収穫すると最も治癒力が強くなるといわれ、古代ギリシャ時代から傷の手当てや利尿、月経困難などに用いられてきました。
中世では、十字軍の遠征において傷ついた兵士を癒すために使われていたとも言われます。
太陽光の少なくなり始める秋頃から暗い冬の季節の到来に、季節性情緒障害(SAD)に陥る方が多く見受けられますが、気分の落ち込みや悲しみから抜け出せない、生きる張り合いもなく楽しめないといった感情が少しでも覗かせたときにセントジョンズワートを活用いただければ、このハーブが持つ素晴らしい力の恩恵を強く感じていただけることでしょう。
セントジョンズワートが持つ成分や効能の研究が盛んに行われており、近年になって悲嘆、絶望、恐れや不安といった感情、また抑うつに対する効果が確認されており、実際に季節性感情障害にも用いられます。
ドイツではセントジョーンズワートエキスが医薬品として認可されているようです。
セントジョンズワートの抗うつのメカニズムについては、当初、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害とされていましたが、セロトニン再取り込み阻害とする説などが検討されており、従来作用の中心はナフトジアントロン類のヒペリシンと考えられてきましたが、作用の中心となる成分もハイパーフォリンであるといった報告や、近年の研究でフロログルシノール誘導体のヒペルフォリンやアドヒペリフォリンなどが主要な活性物質であることが明らかとなっているという報告もされており、明確なメカニズムは解明されておりません。
いずれにしても近年科学的な手段によって軽度〜中等度のうつに対し、エビデンスがいくつも示されており、医学的なエビデンスの信頼性が最も高いとされるコクランレビューにも報告があります。
薬物相互作用の多いハーブのため、薬を服用している方は、併用に注意しながら用いることが重要であり、また重度のうつに対しては効果がありませんので、治療中などで気にかかること、頭のモヤが一向に晴れないということがあれば早急に医師へ相談しましょう。
抗うつ作用を持つハーブはセントジョンズワート以外にもありますが、軽やかで楽しい気分を与えてくれる点において、このハーブが特に優れているかもしれません。
恐れや悲しみがとても強い時は、鎮静系ハーブであるレモンバームやパッションフラワーなどを、前進したいといったポジティブな感情を育てたい時は活力を与えてくれるオートなどを、シチュエーションによってブレンドすることで、より相乗的に効果を得られるでしょう。
セントジョンズワートは軽度〜中等度の抑うつほか、自律神経機能の調整作用から神経疲労や、生理前症候群(PMS)や更年期障害によくみられる不眠、イライラ、憂鬱など不安定な気分の緩和、改善に飲用できます。
前述の鎮静系ハーブであるハルマン、ハルモールを含むパッションフラワーをブレンドするのも良いでしょうし、PMSには鎮静、鎮痙作用をもつフラボノイドのアピゲニンを含み、身体を温める働きがあるカモミールや、冷えや痺れに、鎮静、鎮痙、通経作用のあるサフラン、子宮や骨盤の周囲の筋肉の緊張を和らげるフラガリン含有のラズベリーリーフ、フィトエストロゲン作用を持ちホルモンバランスを整えるチェストベリーなどを、その時々の状況にあわせてブレンドすると良いでしょう。
PMSはセロトニン代謝とも関りがあり、ヒペリシンまたはヒペルフォリンや、ハイパーフォリンによるセロトニンの再取り込みを阻害することが知られているセントジョンズワートは、不安定な気分に活躍します。
セロトニン代謝の観点で言えば、産後の一過性の不安、憂鬱、不眠にも活用できます。
抑うつにあわせ、ホットフラッシュ、寝汗などの更年期症状にお困りの方であれば、収斂性作用とフィトエストロゲン作用のあるセージをブレンドすると良いでしょう。
自信がなく不安に支配され憂鬱な心持ちには、女性性を肯定してくれるローズやジャスミンなどのハーブを一緒にブレンドするのも良いでしょう。
不眠には中枢神経の抑制作用のあるバレリアンが活用できますが、同様に鎮静系ハーブのリンデン、その精油成分であるファルネソールがより深いリラックス効果をもたらすので、芳香浴を併せて活用してみましょう。
ハーブティーの風味としては、ほんの少しの苦味と収斂性から舌に微かな刺激を感じます。
◼️外用
オリーブオイルなどのキャリアオイルに漬け込んで作るセントジョンズワート浸出油は、優れた消炎作用や鎮痛作用を持ち、裂傷、外傷、火傷、神経痛や関節炎、帯状疱疹などに外用薬として活用します。
坐骨神経痛などの神経痛、関節リウマチなど痛みが強い時は、浸出油を塗布または塗擦します。
そのほかチンキ剤を、擦り傷、火傷、出血した患部の消毒を兼ね、浸出油と同様に消炎、鎮痛の目的で用いることがあります。
浸出油、チンキ剤を使用するにあたって、ヒペリシンに光感作作用(光過敏性反応)があるため、日中の外出の際は使用しないでください。
なお、セントジョンズワート浸出油は、アロマテラピーの基材としても使用されます。
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