カレンデュラ/マリーゴールド MARIGOLD
[学名]
Calendula officinalis L
[科名]
キク科キンセンカ属
[和名・別名]
トウキンセンカ、ポットマリーゴールド
[使用部位]
花部
[成分]
カロテノイド(β-カロテン、リコペン、キサントフィル、ルテインなど)
フィトステロール(タラキサステロール、β-シトステロールなど)
フラボノイド(ルチン、クエルセチンなど)
苦味質
多糖類
サポニン
樹脂
精油(カジノール)
[作用]
消炎、抗菌、、抗真菌、抗ウィルス、抗寄生虫、穏やかな発汗、胆汁分泌促進、免疫力促進、リンパ系の活性浄化、体質改善、解毒、利尿、月経調節、通経、鎮痙、皮膚・粘膜の修復、創傷治癒、止血、収斂
[注意・禁忌]
・キク科アレルギーの方は使用しないでください
・妊娠初期の方は内服外用しないでください、その他の時期の使用も医師の指示を仰いでください
[概要]
カレンデュラは多年化することもあるものの、一般には一年草として扱われます。
その歴史は古く、ギリシャ、ローマ、インドなどで料理のほか、染色、薬用、儀式の際などに利用されてきたようです。
属名の「Calendula」は、ラテン語で「各月の最初の日」を意味する「kalendae」が語源で、「小さな時計」を意味します。
カレンデュラの花が日照時間だけ花開くことに由来する説や、1年を通して咲くことからつけられたという説もあります。
種小名の「officinalis」は「薬用の」を意味します。
英名で「pot marigold」、「common marigold」など称されますが、「pot marigold(ポットマリーゴールド)」の「pot」は植木鉢ではなく鍋を指します。
17世紀頃までは食用とする植物を「pot herb」と呼んでいたことがあり、その当時、高級品であるサフランの代用としてフレッシュ、ドライ含めカレンデュラの花びらを様々な料理に使用していたことに由来するようです。
「marigold」は聖母マリアを語源とし、聖母マリアを祝うすべての祭りの時期に開花する黄金色の花という意味で名付けられたとされているようです。
仏名では「souci(スーシ)」と呼ばれ、ラテン語で「太陽に従うもの」の意味である「solsequia」と呼ばれていたものが変化したとされ、花が太陽に合わせて花開くことに由来します。
和名は「唐金盞花(トウキンセンカ)」と呼び、花部分の姿が黄金色の盃に似ていることに由来します。
なお、「キンセンカ」は本来、1597年に日本に渡来した『Calendula arvensis L.』のことを指していたようですが、江戸時代にカレンデュラ『Calendula officinalis L.』が渡来してからはそちらを「キンセンカ」と呼ぶようになってしまったため、牧野富太郎氏が『Calendula arvensis L.』に「本金盞花(ホンキンセンカ)」と名付けたようです。
また、カレンデュラは、そのホンキンセンカと区別するため、「唐金盞花(トウキンセンカ)」と呼ばれます。
園芸店などでも観賞用に販売されているマリーゴールドですが、単にマリーゴールドといってもそれぞれに学名が異なる上、カレンデュラはそれらマリーゴールドとは別種ですので注意が必要です。
マリーゴールドは元来カレンデュラを指し、カレンデュラに似た花植物に、広くマリーゴールドと称されるようになってからは、混同されるケースがみられ大変紛らわしいため、メディカルハーブとしてのマリーゴールドを、同じキク科でもカレンデュラ属であることにちなんで「カレンデュラ」と呼び分けます。
なお、商業用切り花、園芸鑑賞用として一般によく見られるマリーゴールドのひとつを挙げると、英名をフレンチマリーゴールド(又はアフリカンマリーゴールド)、和名をセンジュギク、マンジュギク、コウオウソウ、学名は『Tagetes erecta L. (synonym Tagetes patula L.)』とキク科タゲテス属に分類され、カレンデュラとは全く属も異なる別植物です。
ハーブには、食用に品種改良されており有効成分の明らかになっている品種が多いもの(ミントなど)、観賞園芸用に品種改良されており有効成分の未だ明らかになっていない品種が多いもの(ローズなど)とがありますが、食用として利用する場合、原種系品種を利用するように、という注意喚起をされることがあります。
これは、あくまで有効成分が明らかになっていない観賞用・園芸用品種(人為的に品種改良されたものは食用品種含め全て園芸品種)が多いものに対する注意喚起のようで、カレンデュラにもとても多くの品種が混在しますが、花びらをハーブ利用するにあたり、有効成分において品種間差に極端な差異がないということであれば、花びらを指定部位とした場合、収穫が多いであろう八重咲き品種を利用するのも効果的だろうといった見解もあるようです。有効成分の明らかになっていないものであれば、やはり原種系品種を飲用する方が安全でしょう。
カレンデュラはヨーロッパでは現在でも内外用ともに、またスキンケア化粧品の素材としても使われる一般的なハーブで、古くから胃潰瘍や黄胆、それにのどの炎症や外傷などに使われ自然療法の世界で幅広く利用されてきた歴史があります。
胃炎や胃潰瘍などの胃腸の炎症、胆のう炎などの症状緩和に消炎・鎮痙作用の目的で、また火傷や外傷など損傷した皮膚や粘膜の修復と保護、創傷治癒作用の目的に使われてきましたが、美しい橙色の色彩をもつ花びらの、その見た目の華やかさからブレンドに構成されることが多々あります。
作用が穏やかなため、赤ちゃん〜高齢、敏感肌の方も安心して活用できるハーブのひとつ。
損傷した皮膚や粘膜を修復保護する作用に優れるカレンデュラですが、完全にメカニズムを解明されていないものの、カレンデュラの含有成分である多糖類が免疫系を調整し、カロテノイド色素やフラボノイドなどが複合的に働いて創傷治癒を促しているものと考えられているようです。
粘膜の修復保護、抗炎症、血流促進作用などの観点から、胃炎や胃潰瘍、それに伴う胃痛、また胸焼け、胃もたれ、食欲不振などの症状を緩和する働きがあります。
リンパや免疫系の働きを促す作用、穏やかながら発汗を促し症状を和らげる働きがあるため、熱を伴う風邪インフルエンザ、その予防、またリンパ腺の腫れにも飲用できます。
アトピーや湿疹、ニキビ痕のケア、口唇の荒れといった皮膚トラブルに使用されるほか、浸剤、チンキ剤、軟膏剤など様々な剤型として胃腸の炎症、口内炎、歯肉炎などに内服、または塗布やうがい薬などとして外用します。
ほかにも抗菌、白癬菌などへの抗真菌やヘルペスなどに対する抗ウィルス、トリコモナスなどへの抗寄生虫作用が確認されているようです。
含有成分のひとつであるフィトステロールには、女性ホルモンに似た働きをもつと考えられ、更年期の不快症状ほか、月経不順をはじめ、月経による不調を整えるのにも役立ち、乳腺炎などにも利用されルようです。
カレンデュラの濃い橙色の花びらに含まれる黄色色素はルテインというカロテノイド色素によるもので、青色色素アントシアニンとならび、眼精疲労、かすみ目、白内障予防、紫外線・ブルーライトによるダメージから目を守るのに期待できるようです。
ルテインは、ほうれん草やケールにも多く含有するため、加齢黄斑変症の予防にも有効です。
風味は少し苦味のあるハーブ、花びらは見た目にも美しいので、エディブルフラワーとしてサラダに散らして美味しく召し上がるのも良いでしょう。
◼️外用
花弁を植物油に漬け込んだカレンデュラ浸出油(花びらを植物油に漬け込み脂溶性を主とした有効成分を浸出させたもの)とミツロウで作った軟膏は、抗菌力や抗炎症作用、患部の修復を促す作用に優れるため、皮膚を健やかに保ち、アトピー性皮膚炎、湿疹などの様々な皮膚トラブルに子どもから高齢者まで安心して使用することができます。
ニキビ痕をなるべく残さず治す、ケア用品としての活用方法もありますが、量を塗りすぎると汗や熱を閉じ込め、かえって炎症を悪化させる要因となるので薄く塗りましょう。
妊娠中の方にも、保水性を高めてくれる観点から、皮膚を健やかに保つ浸出油そのものを、妊娠線のできやすいお腹などに塗布し予防に役立てることもできます。
なお、妊娠中の方はカレンデュラを内服するのはお控えください。
乾燥肌の方も活用すると良いでしょう。
アレルギーのある方は初めて使う場合、パッチテストを行うと安心です。
チンキ剤(アルコールに漬け込み脂溶性・水溶性両方の有効成分を浸出させたもの)としても、原液または希釈して内外用に用います。
チンキ剤を5〜10倍希釈し、擦り傷などの消毒に活用でき、傷口が治り始めたら必要に応じてカレンデュラ軟膏を塗ると良いでしょう。
かぜの予防として、抗菌・抗ウイルス作用、免疫系を活性化させる成分を含有するため、風邪インフルエンザ予防や、ひき始めのケアに、濃いめに入れた浸剤やチンキ剤を希釈しうがい薬として活用します。
うがい薬は、のどの痛みの緩和にも有効です。
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